はるはるの“ジュリー初心者”日記

ビギナージュリーファンの“はるはる”が、沢田研二様への愛とジュリー学習の過程を語ります。読書メモ「図書館のなかのジュリー」、ライブ感想、初心者の戯言の3本立てでひっそりと運営中。TwitterID @haruandwanko

平安寿子「あなたがパラダイス」/ジュリー様と共に人生を歩む先輩たちの歴史小説

図書館のなかのジュリー

ビギナーJULIEファンの“はるはる”が、沢田研二様に関する(図書館で借りた)書籍を、
ジュリーに著しく偏った観点で語る読書メモです
(一般的な書評とは異なることをご了承ください)

 

ジュリー度:★★★★(5段階)
平安寿子著「あなたがパラダイス」
朝日新聞社,2007年,1600円+税

 

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 ジュリー初心者の私がツイッターのジュリークラスター界隈に棲んでから現在進行形で思っているのが「先輩ファンの皆さまがやけに可愛い」ということ。
 つぶやく内容が可愛いし、時折写真がアップされるグッズや身の回り品・ファッションも可愛い。行動も可愛いし、ジュリー様への愛情表現も一途で可愛い。

 ううむ。なんでだろう?とずっと不思議に思っていたその理由が本書を読んで腑に落ちたのであります!

描かれるファンとジュリー様の歴史

 本書は更年期を迎えたジュリーファンが登場する3編の短編小説。2005年のアルバム「greenboy」の「MENOPAUSE」から着想した物語です。作中で描かれる更年期症状や、更年期世代の女性が直面する家族や社会の問題、自分が更年期であることを認めたくない葛藤など、最近更年期デビューを飾った私も身につまされる内容が多く興味深く読みました。

 が! ジュリー初心者としての読みどころは、作中に登場するジュリーファンの描かれ方なのであります。この小説が週刊朝日に連載されていたのは2006年なので、当時のジュリー様は57-58歳。

 更年期を迎えたファンたちが、人生でジュリー様とどう関わり、何を見て何を考えて、何を感じてきたのか…ジュリー様との過去の歴史を持たない初心者は、そこがとても面白かった。

 ここから先はネタバレ全開。まだ読んでいない方は、小説を読んでからまた来てくださーい✋


#1.敦子(MITSUKO)とシルビィ➡︎ジュリー様一筋

 この章に出てくるのが「ファンサイトの掲示板」という懐かし文化です。ありましたねー! インターネット黎明期の掲示板文化。ISDN(だっけ?)で3分10円で、繋げるときにピーヒョロヒョロヒョロってFAXみたいな音がして(ん?ワープロでやってた「パソコン通信」と記憶が混同しているかも)。

 で、敦子はこの掲示板で「MITSUKO」と名乗っています。掲示板上でファン同士の交流があり、オフでも仲間にMITSUKOと呼ばれているのは現代のツイッターの世界とまったく同じで面白い。

 小学生時代にジュリー様に堕ちてから一途にファンを続けている敦子は、50歳の今は年間にツアー最低5回、音楽劇3回、トークショー・正月ライブも行き、CDやDVDを全部買い揃えるという「年間のジュリー予算を計上したうえで支出を案配するジュリー中心主義者」。

 うはー、うらやましい…と思うと同時に、こんな“ジュリー中心主義者”の先輩はたくさんいるんだろうし、その先輩たちが50年以上ジュリー様を支えていたと思うと「ありがとうございます🙏」と拝まずにはいられない初心者。

 対して「シルビィ」は同じく掲示板に登場するファンでジュリー様の3歳下。リアルタイムでLPやパンフレットを収集し、ライブや演劇の感想をノートや掲示板に残していた女性。大人になってからもジュリー様の写真をハートで象ったりと可愛らしい。

 この2人に共通するのは、少女時代にジュリー様と出会い、これまでの人生を共に生きていきたということ。彼女たちの人生のあらゆる場面にはジュリー様が存在していて、嬉しいこと・悲しいことすべてにジュリー様の歌声が寄り添ってきた(くぅ〜)。

 超後追いの初心者にとって、この2人はとてもうらやましいタイプの先輩像なのであります。

#2.まどか➡︎中抜けファン

 まどかも50歳。中学生時代にタイガースの王子様に出会い夢中になったファンのひとり。部屋中にポスターを貼り、お小遣いをためてレコードを買い、コンサートに行く時は一番かわいく見える服を着て出かけていました。

 でもそんなまどかも大人になりジュリー様がソロになった頃には熱が冷め、その様子は「夢が栄養源だった少女時代が終わったのだ」と表現されていてなんだか切ない。

 結婚・子育て時代にはジュリー様を思い出すことがなかったけれど、更年期になり実親の介護をきっかけにかつて純粋に憧れたジュリー様に再び出会い、過去の自分を思い出すというストーリー。

 なお、まどかの中学時代の描写がすごく可愛らしくって、少女時代に王子様のファンになった先輩たちはこんな感じだったのかー!と、またまたうらやましくなりました。

#3.千里➡︎後追い新規ファン

 40歳で早い更年期が来た千里は、「MENOPAUSE」をきっかけにジュリー様の魅力を知った新規ファン。33歳のいとこ(従弟)が90年代のロックなジュリーをリスペクトしているという偶然もあり、いとこが教えてくれるジュリー様の曲に勇気をもらい更年期の自分と向き合っていきます。

 この章では、後追いファンがジュリー様の深さを驚きとともに知っていく過程が描かれていて、似た過程をたどっている初心者の私はとても共感できました(そしていとこが語る40代〜50代のジュリー様の楽曲解説も大変タメになった)。

 

可愛らしさに理屈なんていらないんだ

 ジュリー様のファン歴3年半の超後追いの私は、遡れる自分の歴史が限られています。どう頑張っても「ジュリーファンの少女」に遡ることはできないし、今までの自分の人生をジュリー様とともに歩むこともできません。なのでツイッターで先輩たちの歴史や経験を知っても、自分の経験として落とし込めないため、先輩たちの可愛らしさを「なんでだろう?」と不思議に思っていたわけです。

 でも本書で、沢田研二という神話とともに生きているファンの人生を擬似体験したことで、その理由を少し理解できたような気がします。王子様に純粋な気持ちで理屈抜きで憧れたあの頃に、一瞬で戻してくれるのがジュリー様という絶対的な存在。だからジュリークラスタの先輩たちはみんな可愛らしいんだろうなと思ったり。

 中学時代のまどかのように、一番かわいくキレイに見える服を着て純粋な気持ちで「ジュリー!」と叫ぶ。そこには理屈なんかいらないわけで。

マネーもかけよう!MENOPAUSE

 小説の中にはジュリー様の楽曲の歌詞がたくさん出てきます。初心者の私がまだ到達していない2000年代の曲が多くて、小説を読みながら聴くのが楽しかった(100倍の愛しさ、Silence Love、無事でありますよう、この空を見てたら、GO-READY-GO、atom power、ふたりの橋 など)。 

 そして最後になりましたが「MENOPAUSE」について。最初に聞いた時、「あれ?間違って『愛まで待てない』かけちゃった?」と思うくらいアレンジが似ていると思いましたが(どっちも白井さんだからそりゃそうか)。

 歌詞は更年期デビューを果たした今の私にぴったりで「なるほどそうか、ワインに縋ったりスポーツしたりお金をかけたりしていいんだ!」と思い、ちょっぴり救われた気分になりました。

 2005年リリースなのでおそらくジュリー様のご家族へのメッセージソングだったんだろうとゲスパーしていますが、私もちゃっかり便乗中。

 ♪マネーもかけよう、というのは、お金をかけて自分の好きなことをしていいよ、という意味だと勝手に思っております。だからライブに行ってジュリー!と叫ぶのは、優秀な更年期対策になる!と初心者は勇気を得たのでありました。

 

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