はるはるの“ジュリー初心者”日記

ビギナージュリーファンの“はるはる”が、沢田研二様への愛とジュリー学習の過程を語ります。現在は読書メモ「図書館のなかのジュリー」のみひっそりと運営中。

早川タケジ作品集「Paradis,Paradis」/タケジの着せる才能・ジュリーの着る才能

図書館のなかのジュリー

ビギナーJULIEファンの“はるはる”が、沢田研二様に関する(図書館で借りた)書籍を、
ジュリーに著しく偏った観点で語る読書メモです
(一般的な書評とは異なることをご了承ください)

 

ジュリー度:★★★★★(5段階)
早川タケジ作品集「Paradis,Paradis」
リトル・モア,2002年,本体3800円

 

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 「Paradis,Paradis」について語る前に、私がジュリー堕ちしたきっかけを少しお話ししたいと思います。

 あれは2020年2月バレンタインの頃でした。真夜中に偶然ジュリー様の動画を目にしたのですね、紅白の「勝手にしやがれ」を。

 観た瞬間思ったのは「誰だ? これ?」でした。いや、テロップに「沢田研二」って出てるし、もちろん勝手にしやがれ沢田研二さんの曲だと知ってたんですけど、そこで歌っている若者は私の知る沢田研二像ではなかったから。私がリアルタイムで覚えていたのは、30代中盤のメイクが濃く髪が短くてタキシード着てる沢田研二。そして50代のNHKドラマ(オードリー、マチベン)でのふっくらした普通のおっちゃんの姿。

 だから紅白の勝手さんを観たときに「え? 髪長い! 化粧してない!  細っそ! 革パンピッタピタやんけ!  歌うまっ! うわうわうわ…なんだこの人…超かっこいい!」とあらゆる感想が瞬時に駆け巡り、そして「この衣装なに?! この衣装…いや、これ何年前?…少なく見積もっても40年は前だよね? まさかぁーうそだろぉー…」と軽くパニックになり、震える手で次の動画をポチッと押したわけです。

 次はドラマ「ムー」での「憎みきれないろくでなし」でした。音楽に合わせてゆらゆら揺れる細い腰、タバコをふかす美しい横顔、それをプイッと吹き飛ばすかっこよさに、ハートをズギュンと撃ち抜かれたのは言うまでもありません。そしてこの時は細い手首を飾るフレンチカフスがなぜかとても印象的でした。

 というわけで私がジュリー堕ちした理由は、もちろんジュリーのかっこよさなのですが、衣装に目を奪われたという点も大きいんですよね。その後3日3晩取り憑かれたように動画を観まくったのですが、特に衝撃的だったのが紅白の「追憶」です。鳩を出したのも衝撃だったけれど(笑)、現代でも通用するあの黒い衣装のハイセンスさ…。「…これ何年前…? え?ジュリーだけ令和にタイムスリップしてるの?」とまた頭が混乱したのは言うまでもありません。「一体どんなデザイナーがついているんだろう? 相当な天才か、トンパチ*1か、はたまた時空を彷徨う宇宙人か?」と、若干不気味にすら思っていたことを覚えています。

 そしてジュリーファンになって間もなく半年になろうとする現在、わたしは見事に早川タケジさんにも堕ちました。多分タケジ込みでジュリーが好き。タケジが衣装担当していなかったら、ジュリー沼にハマってなかったかも…と思うほどにタケジが好きでたまらないのです(親愛の気持ちが強すぎて、ところどころ呼び捨てになっております。ごめんなさい…)

 

HAYAKAWA Takeji
Costume design,Styling
& Artdirection


 前置きがとんでもなく長くなりました。

 2002年に出版された早川タケジさんの作品集「Paradis,Paradis」です。ジュリーの写真集か!と言われるほどの大ボリュームで、全130ページ中ジュリーが99ページ! もちろんすべてタケジ氏デザインの衣装をまとっています。

 多くの写真にタケジ氏本人の解説がついているのですが…これがおそろしく読みづらい(笑)。透明なページに印刷された解説文が写真に被っているので文字が全然見えない。解説を読むにはいちいち白い紙を挟む必要があるという究極の面倒くささ。本の装丁、デザインもすべてタケジ氏の手によるので大変おしゃれなのですが、アナタ読者のこと全然考えてないでしょ?というツッコミ必至の、読みづらさなのであります。

 その面倒くささを乗り越え頑張って解説文を読むと、やっぱりちょいちょい面白いことが書いてある。私のいちばんはこれ↓です(笑)。

 昔、ジュリーの衣装を作り始めた頃の話。仮縫いしている衣装が気に入ると、ジュリーは、必ず鏡に向かってお尻を向けて、2、3度振って喜んでくれた。私たちスタッフも全員「わぁー、ハハハハッ!」と、大喜びして楽しんでいた。あれはきっと青春だった。

 これさ…試着室で私もやりますけどね。ただし、決して喜んでいるのではなく、角度を変えてヒップラインの見え方を確認するためにやる。ジュリーもそうだったんじゃないでしょうかね?(憶測) 20代の衣装は、ヒップのプリプリ感を強調しているのがやたらと多いわけだし(あの頃のタケジ様に本当に感謝!)。

 そしてこのタケジ氏の文章を読んだ誰しもが、鏡に向かってお尻を振るジュリーを想像すると思いますが(え?しない?)、みなさんどの衣装での想像がお好みでしょうか? 私が一番好きなタケジ衣装はジュリー49歳時の羽根つきお帽子&タイツに超ハイヒールパンプス&ピンクのチュールひらひら〜なのですが、お尻を振る49歳を想像するのはさすがに失礼かと思うので(汗)、もうひとつの大好きな1974年日比谷野音の赤い衣装で想像しておきます。

 

自分大好き。自分の才能に自信満々の天才タケジ

 それではタケジ氏本人の解説文から、抑えきれないジュリー愛の数々を抜粋してみましょう。

 ジュリーとはウマが合う。沢田さんの仕事は「こんにちは」と「お疲れさまでした。ではヨロシク……」ほとんどこれだけの会話で終わるので嬉しい。私は世間話がめんどくさい。もともと自分にしか興味がないし…。

 

 ジュリーは化粧しても違和感がなくて変にならない。逆に凛々しく変身してしまうのが嬉しかった。今当時のジュリーを見ると、なんと綺麗な人だろうと感激するが、当時の私は山口小夜子さん他、美しいモデルさん達がたくさん身近にいたので、私にとって、それは当たり前のように思えた。美男ジュリーの美の基準を世界のトップモデルの女性たちに置いていたなんて、やはり私は、昔からとても危ないのかもしれない……。(CF「天竜の酒 ジュリーの樹里」1979)

 

 始め編集長は坂本龍一でお願いしたい!と言ってきたのだが、当時私はジュリー一筋だったので、ジュリー×山口小夜子ゴールデンコンビが成立。(「ル・キモノ」誌 1984

 

 この頃のジュリーは激痩せしていて「本当に、美しい……」。これで50歳近くだぜ。(「ACT バスター・キートン」1995)

  

 埼玉の土着の雰囲気と香港が私の頭の中でクロスして、香港マフィア風にやってみたくなったわけ。カッコイイ。ジュリーは、私のアイデアに何にでもはまってくれる。(「サーモスタットな夏」 1997)

 

 (香港映画に某アイドルが出演することを受け)やっぱ、痩せてて、美しい時のジュリーにやらせたかった。私が衣装・美術で売り込んで、ウォン・カーウァイ×ジュリー+早川タケジ実現したいもの。メロドラマでさっ、頼りなくて、美しいだけが取り柄の男なんてやってほしい。ジュリー期待してます! 2002年1月早川より。 

 

 タケジ氏のジュリー愛が伝わりますね〜。読んでいるこっちまでニヤニヤしてしまう。

 まあ、でもタケジ氏のことをよく知らなかった頃は、この人きっと手離しでジュリーが大大大好きなのだろうなと思ってたんですが、これを読むと実は意外と醒めているところもあるんですよね。最近わかってきたのは、タケジ氏が誰よりも愛しているのは天才的なセンスを持つ自分自身なんだろうなってこと。次の解説文あたりでそれが読み取れます。

 

 チープシック。それが、おしゃれの神髄。外人並のセンス。今見ても、自分のセンスにほれぼれする。Gジャンの古着と、駅なんかで売っている安いスカーフ。材料費は1万円くらい……。(「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」1981)

 

 こんなのをステージで着て歌え、かつハードに動き回れるように作ってあるのも早川の服のスゴイところだと自負しています。でもそのことを解る人が日本ではあまりにもいない!(『HF』誌「ジュリーはアンドロイド」1979)

 

 この頃はハッキリ話題性を考えていた。それがオモシロイように当たった。私はマスコミに出ないほうがカッコイイと思って隠れていた。損したかな? なぜそんな風に考えたか不思議。(「LOVE(抱きしめたい)」1978)

 

 目のコンタクトレンズが当時話題になった。レーザー光線を日本で一番最初にミュージシャンに使ったのは私です! こういうことはあまり評価されないからクヤシイ!

(中略)シリコンで作ったトルソー風衣装。三宅一生より私のが早かった。その辺見極められる人は少ない。(「恋のバッドチューニング」1980)

  

 この後すぐビジュアル関係を首になった。私は一般の人の評価とかに合わせられる技術もないし、そういう性格でもないので「しょうがないな…」と思った。しかし、ジュリーの衣装の仕事だけは、その後も図々しく続けた。子供時代からたいした根拠もなく、私は自分の才能に自信満々なので、こういうことは全然ヘッチャラヘッチャラなのだ。(「単純(シンプル)な永遠」1990)

 

 もうね、才能を持つ人の自己愛発言、自己顕示欲満々発言は私の大好物。こういうのを読むとタケジがますます好きになるわけですよ。

 ジュリーという最高の素材を自由に使って自分の天才的センスを発信できるなんて、そりゃ楽しかったと思うのです。最高のおもちゃを与えられて自由に遊んでいいよ、って言われた子供みたいな楽しさだったのでしょうね。

 そのせいなのか、「やりすぎだろ!」と思える衣装やビジュアルもたっくさんあるんですけれどね。これはまた後ほど。

 

どうして私はタケジが好きなのか?

 私はツイッターでタケジ氏のことを何度かつぶやいていますが、その時に「変態」という言葉を使っています。こんな感じ↓で。

 変態って普通は否定的な表現ですが、特別なレベルに到達すると褒め言葉に思えます(私だけですかね? この感覚)。「個性的」という言葉の最上位変換みたいな感じなんですよね。最高に変人で、最高に突き抜けていて、最高にこだわりを持っていて、最高にそれを追求できてて、最高に実現できている人っていうイメージの言葉。

 タケジ氏は、センスや発想が突き抜けてて誰にも真似できない領域にぶっ飛んでいると思うんです。私が思うには、そこがたまらなく変態で素敵すぎる。

 49歳のおピンク衣装なんて、他の誰があんなの思いつく?!と月に向かって大声で叫びたいくらいです。突き抜けすぎでしょう、変態の極みですよ。

 テーブルクロスをジュリーの体に巻きつけてジョキジョキはさみを入れるのも、比叡山で花婿に乳首透けてる白い衣装を着せるのも、金キャミのときに全身ゴールドにしちゃうのも、セロファン上着破ったら金太郎の腹掛けみたいな衣装が出てくるのも、

 突き抜けてますよね。変態ですよね(褒めてますよ!)。だからたまらなくタケジが大好きなのです。

 Paradis,Paradisの掲載作品で私が一番好きなのは、プリンシバル風のブラウスとタイツ(「中野サンプラザリサイタルポスター」1975)。これ本当に似合ってる。追憶の上半身裸にサスペンダー(1974)も実に変態的で素晴らしい。タケジ氏とジュリーが初めて組んだ時の写真(パナマ帽、白のフリルブラウス、ジーンズ、ロンブー=「JUWEL JULIE」1974)も掲載されていますが、このブラウスはドラマ「悪魔のようなあいつ」のオープニングで着ていますね(篠ひろ子さんも着たけど)。

 ドラマを観たときは昭和50年にレースやらフリルやらの恐ろしくハイセンスな男性用ブラウスを着ててさすがジュリー♡と思っていましたが、後にタケジ氏デザインと知って超納得したものでした。

「やりすぎ」も必要不可欠と思うのです

 とまあ、わたくしここまでタケジ氏を絶賛しておりますが、実は好きじゃない衣装の方が多いんですよね。Paradis,Paradisに掲載されているものだと、好きと思えるのは 33/83で39.7%(少なっ!)。好きなのはとてつもなく好きだけど、絶対相容れない、これ苦手だわ、と思うものの方が圧倒的に多い。

 苦手なのはアンドロイド風のもの。だからTOKIOの衣装や恋のバッドチューニングのアートワークは好みじゃない。やたらと白塗りに見えるG.S. I LOVE YOUやACTあたりも苦手。もっと言うと、マゼンタ100(ドピンクのことです)だらけで世界観がドギツイお酒の広告も苦手。埼玉の土着の雰囲気うんぬんの写真にいたっては、凡人たる私の感性の範囲を完全に超えていてまったく理解不能(注・すべて私の個人的な主観です。お好きな方は怒らないでください〜)。

 でもね、この鬼才とすべての好みが合うなんてことは絶対あり得ないし。そもそも嫌いなものもあるからこそ、好きなものがより際立つのですよね。ジュリー49歳のおピンク衣装を初めて見た時(49歳だとは知らなかったけど)の感激は忘れられないですもん、ほんと。

 あと、好きと嫌いは紙一重とはよく言ったもので、乳房をつけた女神の衣装は好きじゃないけれど、あの衣装で十字架に横たわった写真はたまらなく好きだし、アンドロイド風のバッチュは苦手でも、中身の金太郎(笑)は大好き。ジュリーも雑誌で「“カッコいい”と“気持ち悪い”は背中合わせだと思う」と言ってるし、万人に受けるものなんてないともよく言っているし。

 なによりも全部が全部好きと感じるなんて、つまらない。だから「タケジ、やりすぎ…」と思う衣装も、私にとっては必要不可欠なのです。

タケジが“着せる才能”ならば、ジュリーは“着る才能”

 でもですね、「タケジの着せる才能すごすぎ。よくもまあ、こんなに振り幅広く考えつくよなぁ…」と思うと同時に

「100ページ全部が同じ人だとはとても思えない。ジュリーすごすぎ」ってことも強く思います。 

 ジュリーには“着る才能”があると思うんですよね。

 それは天賦の才に加えて、後天的に備わったものでもあるんじゃないかと思います。以前読んだ村上ポンタさんの本(⇨リンク)に「ジュリーは普段は地味な人。柔軟性があって何にでも化けられる。すぐ化けられるように真っ白なキャンバスのような状態を意識的に保ってるのでは?」という感じのことが書かれていて、なるほどなーと思ったんですが、Paradisでの〝百変化”の化けっぷりをあらためて見るとこれを思い出すんですよね。

 それと、これは散々語られてきていると思うけれど、ジュリーの度胸や思い切りがすごいと思うんです。タケジ氏を信頼して自分はほとんど口を出さないのは潔いし、批評をすべて自分で受けとめる覚悟を持って奇抜な衣装を着る度胸と度量もすごい。下手したら一生言われるようなイメージがつくかもしれないのに、恐れないんですよね。これについてはタケジ氏も別な雑誌で「ボクのわがままを受け入れるスケール。やっぱり画期的な人です」と話していますし。

 あと、私がもうひとつすごいと思うのは、何かに化けたら必ずリセットできるジュリーのリカバリー力

 そんなことも含めての、“着る才能”が豊かな人だと思うのです、ジュリー様は。

 

数字をもうひとつ

 そうだ。Paradisの中で好きな衣装は39%と述べましたが、別の数字も出しておきましょう。Paradis,Paradis全掲載写真(年代が明記されている69枚)のジュリーの年齢です。

 

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掲載写真 撮影時 年代分布 (n=69)

 これはやはり20代後半〜30代前半が圧倒的で6割を超えます。しかしACTの写真も多いので、40代の美しさも拝めます。50代のは2000年の「耒タルベキ素敵」のお耽美写真でした。

 これのほかに、完全に私の好みで露出率ってのも出してみたんですが、グラフをポチポチ作ってアホな文章書いているるうちに、なんだか虚しくなってきちゃったので…割愛します。

 

図書館で借りられます

 写真をまったく出さない長文にここまでお付き合いいただきありがとうございました。

 写真集「水の皮膚」同様、お宝本として高値で取引されているParadis,Paradisですが、私は定期的に地元の図書館で借りています。水の皮膚と違って結構あちこちの図書館にあるので、まだ見たことがない方は地元の図書館に相談してみてください。もし地元になくても「図書館間相互貸借」(⇨リンク)という方法で簡単に借りることができますので。そしてこの鬼才っぷりを存分にご堪能ください!

 貸出期間中まるで私物のように部屋に飾っている私は、その日の気分や体調、天気によって飾りたいと思うページが変わるのでとても面白いです。昨日は毒々しいと思った写真が今日は魅力的に見えたり、お耽美写真を見て気持ちが落ち着いたり、はじけてる写真に元気をもらったり。そんな楽しみ方もできる最高な作品集です。

 あー…新刊出してほしいなぁー。できれば今度はジュリーオンリーで。タケジ様、なにとぞよろしくお願いいたします!

 

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*1:プロレス用語。奇天烈で常識や既成概念が当てはまらない思考や行動をする人を指す言葉